失われしX68000用マウス・トラックボールの止め金具たちを再生

2020/08/27(木) - 23:35 | bisoh
地味にやるべき事が多いX68000用マウス・トラックボールの修理、今回はこれの内部にあるはずだったストッパー金具たちを再生した話。

我が家には前回漂白したグレーに加え、チタンブラックカラーのマウス・トラックボールもあり、そのどちらもが入手時から別々の金具が足りない事態に陥っていた。

グレーの方は、マウスモードとトラックボールモードの切替スイッチをどちらかに止めるための金具。チタンブラックの方は、マウスボール周りの回転部分を止めるための金具。これらがないため、マウスを少しでも動かすと、それぞれの位置がズレてしまっていた。ちょっと不便かなーと言うだけでは片付けられない機能的な問題なので、修繕必須である。

入手当初はこんな感じで、回転部がロック出来ずに徐々にズレてきてしまっていた (c)Hosoda Bisoh
底面に見えるMとTの文字があるスイッチの止め金具が失われていたグレーのマウス・トラックボール (c)Hosoda Bisoh


しかし、2020年にもなってこれらの補修部品だけ手に入るはずもなく、そうなれば自分で作る他ないのである。そういえば「ないものは作る」って昔どこかでよく聞いたわね……。

金具は片方のマウスには存在しているので厚みを測ったら0.2〜0.3mmほど。うちの缶ゴミ入れの中から何種類かの空き缶を触ってみて、一番強度的に近そうだったのがコレ。シーチキンのアルミフタ。ノギスで測ったら0.3mmあった。最初から板状なのも切り出しやすくてベスト。

紛うことなきシーチキンのアルミフタ (c)Hosoda Bisoh
シーチキンのフタを金属用のハサミでカットしてパーツを制作した (c)Hosoda Bisoh


ジュースのアルミ缶なんかは概ね0.1mm程度しかないので、加工は楽だけど、曲げ強度が低いので却下。今回はどちらもバネ的に働く部品で強度も必要なため、余計な軽さ薄さは意味がない。

こうして素材の選定が終わり、金属バサミでシーチキンのフタをだいたいの形にカット。サイズは全て目見当の現物合わせ。この手の細かい板の切り出しは、線を引いても手作業では正確に切れないので、ほんの少し大きめに切って、ヤスリで各辺を削って合わせこんでいく方が良い。

上が元パーツ。シーチキンのフタをカットして、ヤスリで馴らし、真ん中にポンチを打ったのが下 (c)Hosoda Bisoh

長さをあわせて再カットし、ラジオペンチで曲げを入れて完成 (c)Hosoda Bisoh

板を切り出したら、平らなうちに中央にポンチを打って、突起を作っておく。機械で押し出すように綺麗にはならないけれど、機能としては突起先端が溝にかかってくれればOK。このままラジオペンチで曲げ加工を行った。これもまあ現物合わせ。

というわけで、さほど時間もかからずに新しい止め金具が完成。あとは突起の引っかかり具合を三たび現物合わせで調整しておしまい。キツめなところから、ヤスリで突起先端を少し削ってまた確認、と言う流れ。

この金具の設置箇所はココ (c)Hosoda Bisoh

制作した止め金具をピンセットで設置 (c)Hosoda Bisoh
何度か脱着し、バネ感を確認しながら調整 (c)Hosoda Bisoh


見た目のクオリティーはとても元の部品には敵わないけれども、必要な機能は十分に満たしてくれたので、自分が使う分には完璧。外からは全く見えない物だから、多少の出来を気にしても仕方がないかなーと。

M←→T切替スイッチの金具もこんな感じで同素材から制作 (c)Hosoda Bisoh

ストッパー金具を分離したところ。少し突起が削れているのは、ヤスリで出具合を調整した跡 (c)Hosoda Bisoh
この金具は、脱落しないよう、わずかに間の樹脂を挟み込む長さに折り曲げた (c)Hosoda Bisoh


これにてマウス・トラックボール本体の機能は整った。前回までで内外ともに綺麗になっている。次はいよいよ最後の試練、マウスボールの制作へ。