X68000マウス・トラックボールのベアリングを交換して、スムーズなマウスボールの転がりを取り戻そう

2022/02/01(火) - 21:26 | bisoh
Twitterをご覧の皆さんはご存知の通り、近頃の自分は、X68000マウス・トラックボール用のより良いマウスボールを制作すべく取り組んでいた。結果それは完成に至ったのだが、その中で、2台のうちグレーの1台が、頑張って球体の精度を上げてもボールがうまく転がらなくて困っていた。

「これはマウス・トラックボール本体側に問題あるのでは?」と言うことで、ボールと接触する軸側に触れると、やはり回転が重い。もう1台のチタンブラックな本機は割とスムーズに回るのだが、グレーのこちらはそれに比べてだいぶ重い。試しにグリスアップしてみたものの、根本的に内部の鋼球やレールが傷んでいるようで、全く改善しなかった。

DDR-725ミニチュアベアリング (c)Hosoda Bisoh

そこでベアリングの交換を思いついて、Twitterでフォロワーさんともやり取りしながら適合する物を探してみた。サイズは外径7mm×内径2.5mm×幅2.5mm。よく検索にヒットする他のベアリングの品番を眺めていて、試しに「ベアリング 725」と打ってググってみたらビンゴだった。

ベアリングの品番は「DDR-725」。これが最終的に1台あたり「5個」必要となった。1個200円台で入手出来るので、5個買って送料入れても2000円はかからない。

最初は金属軸を受けている部分だけ、合計4個あれば…と思っていたのだけど、マウスモードとトラックボールモードの切替部を兼任している白い樹脂ホイールも同じDDR-725に交換する事で、感動的な程スムーズな転がりっぷりを得ることとなった。

なお、同型でフランジ付きの物(DDR-725F)があるが、そちらを買ってはいけない。「フランジなし(品番末尾にFがないやつ)」を買うべし。

DDR-725は、マウス・トラックボール2台分となる10個購入 (c)Hosoda Bisoh
マウス・トラックボールとDDR-725。マウスボールは、ついに完成に至った自作球 (c)Hosoda Bisoh


ベアリングを交換してからマウス・トラックボールを使ってみると、そのスムーズなボールの動きに本当に感動するので、X68000ユーザーは絶対にやっておくべきだと思う。

ベアリング交換手順 その1 金属軸部のベアリング交換

ここからは、いつも通りベアリングの交換手順を写真で。

【分解・組立時の注意】ベアリングや基板を収めている白い樹脂ケースと基板も分離し、完全分解すること。分解せずに金属軸を外し、ベアリング交換後に嵌め戻すと、中の回転盤にある金属端子と基板とが軸に押し付けられて、各部を傷めたり、接触不良を起こす恐れがある。

マウス・トラックボールの底面のネジ3本を外し、上のカバーを外す。筐体の分解はここまででOK (c)Hosoda Bisoh

マイナスの精密ドライバーを使って、樹脂ケースから金属カバーの爪をめくって外す (c)Hosoda Bisoh
金属カバーを外したら、基板の円形部を止めている樹脂ケースの爪2つを広げ、基板を分離する (c)Hosoda Bisoh


基板を分離すると、カウントを伝えるであろう回転型の金属端子が出てくる。この先端が非常に繊細なので曲げないよう注意(曲げた…) (c)Hosoda Bisoh

先述の注意書きの通り、この回転盤の金属端子がむき出しになる段階まで樹脂ケース部を分解する事。不完全な分解のまま作業を進めてはいけない。

ここまで来れば、あとは端子部を傷めないよう気をつけながら金属軸を引き抜くだけ。金属軸とベアリングは密着していないので、錆等で固着していなければ、特殊な工具を用いなくとも、手で引っ張るだけで抜ける。

左の金属軸は、右の回転盤に圧入されているだけなので、思い切って真っ直ぐ引くと抜ける (c)Hosoda Bisoh

ベアリングは樹脂ケースの内側からドライバーなどで押し出せる (c)Hosoda Bisoh
全ての分解が終わったところ (c)Hosoda Bisoh


上2つが旧ベアリング、下2つが新ベアリング。外からだとさすがに違いはわからない (c)Hosoda Bisoh

新しいベアリングを挿入して、元の状態に戻す (c)Hosoda Bisoh
2つとも同様の作業をして、金属軸側の交換作業は完了 (c)Hosoda Bisoh


ベアリング交換手順 その2 樹脂ローラーのボールベアリング化

これの交換は盲点で、一人では思いつかなかった。最初はメンテさえすれば改善するかと思ってやってみたが、そうはならなかった。

Twitterで次どうすべかーとツイートしていたところ、フォロワーのzatoさんが「ここもベアリングにしてみては」と提案してくださり、実行するに至った。

この樹脂ローラー、寸法を測ってみると、外径7mm×内径2.6mm×幅2.8mm、軸側の直径が2.5mm……つまり……と言うわけでDDR-725を嵌めてみると幅こそ0.3mm違うものの、他はピッタリ。アッサリと解決してしまった。ローラー内径も本来は2.5mmで、使ううちに摩耗で広がったのだろう。

モード切替部にある樹脂製ローラー。これもまずはメンテ (c)Hosoda Bisoh
再度本体の上カバーと取り、モード切替部からローラーとスプリングを取り出す (c)Hosoda Bisoh


分解した樹脂ローラー周り。軸が埃と錆でえらいことになってた (c)Hosoda Bisoh
600番のサンドペーパーで優しく埃と錆を落とした (c)Hosoda Bisoh


きれいになった樹脂製ローラーの金属軸 (c)Hosoda Bisoh

樹脂ローラーを本体へ戻して上カバーを閉じる (c)Hosoda Bisoh
ボールの転がりはメンテ前よりは良くなったものの、マウスモードだとかなりボールが引っかかり使い物にならず (c)Hosoda Bisoh


このメンテナンスは満足いく結果をもたらさなかったが、zatoさんのコメントを得て、ここからマウス・トラックボールは劇的な改善、否、アップグレードを果たす。本当に感謝!

ここにもDDR-725が使える事が判明したので交換 (c)Hosoda Bisoh

DDR-725に交換後、本体に戻して再々組み立て (c)Hosoda Bisoh

指先の軽い力だけでスルスルとボールが転がる!!!マウスモードでも文句なしの転がりっぷり (c)Hosoda Bisoh

大事なことだからもう一度書くけれど、交換するベアリングは5個、全てDDR-725でOK!中途半端はダメ。5個必ず交換しよう。そうすれば長年酷使され、くたびれたマウス・トラックボールが水を得た魚のごとく蘇る。マウス・トラックボールを今も使うX68000ユーザー全てに、このカスタマイズをお勧めしたい。

そしてタスクはいよいよ自作マウスボールの量産に移る。