ローランド製MIDI音源「CM-32LN」を分解修理してX68000で鳴らす

2021/08/08(日) - 13:10 | bisoh
X68000のゲームと言えば、対応したMIDI音源と共に語られることも少なくない。しかし当時の自分はそこまでお金が回らず、MIDI音源が奏でるゲームミュージックの数々を直に聞くことなくX68000とお別れしてしまったのであった。

そのリベンジを果たすべく、X68000 SUPERを再入手した今、2021年に入ってからMIDIボードとRoland SC-55を次々購入。その後それだけでは飽き足らず、その後もう1つの対応機器「MT-32」か、その互換音源を探し求めていた。そこでヤフオクにて発見したのが「Roland CM-32LN」。

Roland CM-32LN (c)Hosoda Bisoh

このCM-32LNなる製品は、NEC製ノートPC「98NOTE」の底面とほぼ同サイズに作られており、その下に敷くと98NOTEとの一体感も出て見た目が良いらしい。

そうは言っても私の母艦はX68000。気になるのはMT-32との互換性。探してみると、YouTubeでMT-32とCM-32LNの両方で同じX68000用ゲームをプレイしている動画が見つかったので、聴き比べてみた。……はっきり言って、自分の耳ではさっぱり差がわからないくらいには同じだった。これはもう完全互換と考えてもいいんじゃない?知らんけど……と言うわけでヤフオクで多少競った末に落札、我が家にそれはやってきた。諭吉様2枚消えた。

大きいと言うか、広い (c)Hosoda Bisoh
MacBook Pro 2020とほぼ同じ幅。奥行きは4cm近く長い (c)Hosoda Bisoh


全面パネルにはヘッドフォン端子とボリュームがある (c)Hosoda Bisoh

裏返したところ。電池ボックスがある (c)Hosoda Bisoh
電池は単3を6本使用する (c)Hosoda Bisoh


早速ウキウキでX68000のMIDIボードへ接続し、スピーカーに出力してみたところ、「うん……音出ないね……」。正確には音量MAXにすると、たまに切れ切れかつ小さく、一部の音色が鳴ってはいた。そんなわけで最初にやることと言えば、電解コンデンサの交換。筐体から基板を取り出し、全ての電解コンデンサの仕様をリストアップし、部品が到着次第修理に臨んだ。

CM-32LNをバラす

CM32-LNは98NOTEの底面サイズに合わせてあるため、そこそこ薄いが、とにかく幅広である。どれくらいかと言うと、Roland SC-55の横幅にプラス10cmほど。収まりが悪く、少々置き場所に困るレベルだったりする。

自分は探したタイミングで見つけたのがこれだったゆえ購入したわけだけど、そうでなければ普通にMT-32やCM-32Lで良いと思う。

とまあ余談はともかく、分解手順を写真でどうぞ。

底面のネジを全て抜き、上蓋を外すと、基板全体を覆うシールドが現れる (c)Hosoda Bisoh

シールド上にある真鍮色のネジを抜いていく (c)Hosoda Bisoh
ここまでに外したネジのみなさん (c)Hosoda Bisoh


続いて背面端子パネルのネジを抜く。黒いのが4本、「TO COMPUTER」の端子部に2本 (c)Hosoda Bisoh

背面パネルの取り外し完了 (c)Hosoda Bisoh

シールドを持ち上げて、前面パネルのLED等や電池ボックスから伸びるケーブルのコネクタ3つを、メイン基板から引き抜く (c)Hosoda Bisoh

3つのコネクタを外したところ。これで底部とメイン基板を分離できる (c)Hosoda Bisoh
メイン基板を分離した底面パネル (c)Hosoda Bisoh


シールドのついたメイン基板を裏返して六角スペーサーを留めているネジを外していく (c)Hosoda Bisoh
スペーサーは全部で8本 (c)Hosoda Bisoh


ここまで終わると、シールドとメイン基板を分離できるようになる。あとはメイン基板の上に載った小さな基板を外すだけ。

むき出しになったメイン基板 (c)Hosoda Bisoh

メイン基板の上に載っているサブ基板、と言うか心臓部? (c)Hosoda Bisoh
メイン基板とはソケットで接続されているため、分離可能 (c)Hosoda Bisoh


取り外された小基板 (c)Hosoda Bisoh

これにてCM-32LNの分解はおしまい。いよいよ電解コンデンサの交換に入れるようになる。なお、小基板には電解コンデンサが1つも使われていないため、今回の修理対象からは一旦除外した。

CM-32LN 電解コンデンサ 一覧表

電解コンデンサの発注前に作成した一覧表をここに。両極性のものが使われている部分があるので、購入や作業の際は間違えないように注意。

高さ:未記載=通常型、低=低頭型
極性:未記載=有極性、両=両極性

No. 電圧(V) 容量(uF) 高さ 極性
C1 6.3 47
C2 6.3 47
C11 25 4.7
C12 25 4.7
C13 25 4.7
C14 25 4.7
C15 25 4.7
C16 25 4.7
C24 6.3 10
C25 6.3 10
C26 6.3 470
C29 6.3 47
C30 6.3 47
C32 16 10
C33 16 10
C34 6.3 47
C35 6.3 47
C38 16 2200
C39 16 10
C40 16 47
C41 16 10
C42 16 47
C46 6.3 1000
C47 6.3 1000
C52 16 10
C53 16 10
C58 6.3 100
C66 6.3 100
C77 25 4.7
C83 6.3 100
C85 6.3 100
C87 6.3 100
C90 6.3 100
C98 6.3 100
C101 6.3 100

電解コンデンサを取り外す前に1つずつ仕様をメモしていった (c)Hosoda Bisoh
交換用に買い揃えた新しい電解コンデンサ (c)Hosoda Bisoh


基板から全ての電解コンデンサを取り除いたところ (c)Hosoda Bisoh

全ての電解コンデンサの交換が完了 (c)Hosoda Bisoh

注意した部分や気になったところ

先にも記したが、使われている電解コンデンサには両極性のものが12本ほどある。以下がその内訳。この点は注意したい。

C11〜C16:25V/4.7μF
C32、C33:16V/10μF
C39、C41:16V/10μF
C40、C42:16V/47μF

両極性の電解コンデンサが何本もあるので要注意。この緑のC11〜C16は全てそれ (c)Hosoda Bisoh
手前の4本(C39〜C42)も両極性の物が使われている。ボケているが奥に見える同色通常高のC32、C33もそう (c)Hosoda Bisoh


次の点として、一番大きな電解コンデンサ「C38: 16V/2200μF」。これだけが、側面が接着剤で基板にくっついていた。これはそれほど接着が強くなかったため、マイナスドライバーを横から差し込んで、少しずつ持ち上げることで無難に剥がすことが出来た。

この一番大きな電解コンデンサ(C38: 16V/2200μF)だけ、側面が接着剤で基板にくっついている (c)Hosoda Bisoh
ボンドと基板の間にマイナスドライバーを慎重に差し込みながら電コンを剥がした (c)Hosoda Bisoh


それと、今回の作業には関係なかったが、背面のMIDI IN端子2つの内部には金属板によるスイッチ的なものがあり、ちょっと気になった。

と言うのもこれらを覆うクリアカバーが簡単に外せないようになっており、内部をどうにかする事が出来なさそうだったから。中の金属板が若干腐食していたため、本来なら研磨するなどしたかったのだが、今回は諦めた。端子自体はオスコネクタのピンにフラックスクリーナーを吹きかけて抜き差しを繰り返すことで、簡易的なクリーニングを行った。

MIDI INのコネクタだけ透明カバーに覆われていて、内部にスイッチ的な物がある (c)Hosoda Bisoh

MIDI INにオスコネクタを接続する前 (c)Hosoda Bisoh
MIDI INにオスコネクタを挿入すると、白いプラパーツが押され、中の金属板同士が接触する (c)Hosoda Bisoh


復活、柔らか音源

電解コンデンサの交換が終わり、X68000にてMT-32対応のゲーム「出たな!ツインビー」を起動、CM-32LNの演奏テストを実施した。起動後、音源にMT-32/CM-32Lを選択すると、流れてきたのは内蔵音源とは違う柔らかめな音色。修理は成功。ネットでしか聞いた事がなかった音が、ついに我が家にも!

その後もグラナダやグラディウスII、ジェノサイド2などでCM-32LNが奏でる音楽を堪能し、最近はシステムサコムのメタルサイトも手に入れて鳴らしてみたりしている。

出たな!ツインビーでテスト。ちゃんとCM-32LNから音が出た! (c)Hosoda Bisoh

各所のネジを締め戻してCM-32LN修理完了! (c)Hosoda Bisoh
CM-32LNをSC-55の下に置いた。幅違いすぎ (c)Hosoda Bisoh


こうしてSC-55とMT-32互換音源が揃い、かつて夢だったMIDI音源によるゲームミュージックの多くをX68000で聞く事が出来るようになった。本当に嬉しい!次は液晶パネルのバックライトがいつの間にか点かなくなってしまったSC-55を修理する予定。