全日本選手権ロードレース2014観戦記その4 女子エリート

2014/07/22(火) - 21:51 | bisoh
6月29日(日)、全日本選手権ロードレースは男女ともにエリートを残すのみ。天候は早朝から雨。予報では見ていたものの「またか!」の思いがよぎる。昨年の全日本選手権も日曜日は雨だった。自転車レースに限っては、どうも雨と縁がある。奥さんに「また雨だよー」と愚痴を言いながら朝食を食べ、会場へと再び車を走らせた。

この日のスタートは男子エリートが8時ジャスト、女子エリートが5分後となっているが、前回と同じくゴールタイムは女子エリートの方が早いため、こちらから。

雨がパラつく中スタートした女子エリート雨がパラつく中スタートした女子エリート (c)Bisoh
女子エリートは126.4km、8周回の戦いとなる。個人的な本命は萩原麻由子選手(Wiggle HONDA)。6月27日の全日本選手権TT女子エリートで、昨年の全日本TT&ロード2冠の与那嶺恵理選手に50秒差をつけ圧勝している。

何より萩原選手は全日本ロード3連覇の後、昨年与那嶺選手にタイトルを奪われており、今回は期するものがあるはず。その結果が全日本TTに現れたと考えた。朝見かけたところコンディションも良さそうで、少なくとも昨年のように大きく遅れを取るレースにはならないだろうと思えた。

須藤むつみ(Ready Go Japan)が先頭で1周目をクリアーしていく須藤むつみ(Ready Go Japan)が先頭で1周目をクリアーしていく (c)Bisoh昨年に続き濃霧発生。なんで自分が行くといつもこうなの!?昨年に続き濃霧発生。なんで自分が行くといつもこうなの!? (c)Bisoh

レースが始まって間もなく、雨に加えて濃霧発生!「あーこれもまた去年見た風景」と嘆く。雨は嫌いじゃないのだけれど、たまにはカラっと晴れたレースも見たいのだよね。

1周目は須藤むつみ選手(Ready Go Japan)が先頭を必死の形相で引いてクリアー。仕事を終え、2周目を終えた時点で自ら自転車を降りた。最後まで戦えないと自覚した上で参戦したレース、こういう判断もアリだ。

途中、1人飛び出した萩原麻由子(Wiggle HONDA)途中、1人飛び出した萩原麻由子(Wiggle HONDA) (c)Bisoh
一時先行した萩原。呼吸や脚の回転には余裕が見てとれる一時先行した萩原。呼吸や脚の回転には余裕が見てとれる (c)Bisoh前を追う森本朱美(スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ)と江藤里佳子(鹿屋体育大)前を追う森本朱美(スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ)と江藤里佳子(鹿屋体育大) (c)Bisoh

霧が薄まってきた4周目、萩原選手が単独で補給所の前を通過していった。追うのは与那嶺選手、そのすぐ後に小集団といった格好。3周目の上りで何か動きがあったようだけども、実況の届かない位置だったこともあり、自分は把握出来ず。

この動きは間もなくまた一つになった模様。その後はすでにちぎれてしまった選手達が、なんとか追いつく機会をとペダルを踏み込み通り過ぎていく。

智野真央(Neilpryde Men's Club Pro Cycling)が引いてゴールラインを通過する先頭集団智野真央(Neilpryde Men's Club Pro Cycling)が引いてゴールラインを通過する先頭集団 (c)Bisoh
西加南子(LUMINARIA)を前に草原を横切る先頭集団西加南子(LUMINARIA)を前に草原を横切る先頭集団 (c)Bisoh
そしてこの後5周目、どうも女子選手達が来るのが遅いな、と思ったら、どうやら男子エリートのコントロールライン通過時刻と女子エリートのゴール時刻が重なりそうなため、時間調整のため女子選手達が停止させられていたらしい。もちろん前も後ろも停止時間や距離は同じに保たれたようだ。レースが並行すると、こんなこともある。

遅れを取った後方集団。江藤里佳子(鹿屋体育大)、森本朱美(スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ)が前を引く遅れを取った後方集団。江藤里佳子(鹿屋体育大)、森本朱美(スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ)が前を引く (c)Bisoh霧雨の中、先頭集団が上ってくる霧雨の中、先頭集団が上ってくる (c)Bisoh

萩原らと先頭集団の前で走る与那嶺恵理(サクソバンクFX証券)萩原らと先頭集団の前で走る与那嶺恵理(サクソバンクFX証券) (c)Bisoh先頭集団中程を走る西加南子(LUMINARIA)、米田和美(Ready Go Japan)、智野真央(Neilpryde Men's Club Pro Cycling)先頭集団中程を走る西加南子(LUMINARIA)、米田和美(Ready Go Japan)、智野真央(Neilpryde Men's Club Pro Cycling) (c)Bisoh

再び動き出したレース、6周目までは集団のままレースが展開し、7周目に動きが出る。牽制状態に入った集団から与那嶺選手がアタックを開始して、単独先頭に踊り出た。その後ろを萩原選手が追っていく。後ろからは西選手ら小集団が通過。

与那嶺選手が最終周回である8周目の下りを終える頃、萩原選手とは40秒まで開いたと実況が伝える。「これで決まりか」と言う雰囲気が会場によぎる。しかしレースはこの後、観客の僕らを熱狂へと巻き込んでいく。

アタックを決め、逃げる與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)アタックを決め、逃げる與那嶺恵理(サクソバンクFX証券) (c)Bisoh
與那嶺を追う萩原麻由子(Wiggle HONDA)與那嶺を追う萩原麻由子(Wiggle HONDA) (c)Bisoh
上野みなみ(鹿屋体育大)らが與那嶺と萩原を追う上野みなみ(鹿屋体育大)らが與那嶺と萩原を追う (c)Bisoh西加南子(LUMINARIA)らも必死の形相西加南子(LUMINARIA)らも必死の形相 (c)Bisoh

そう、上り区間で荻原選手が満を持したように追い上げを開始したのだ。

国内の自転車レースではおなじみの名実況・DJがらぱさんが残り距離と時間を伝えるたび、2人の差が5秒、また5秒と詰まっていく。ざわめくゴール前。誰も予想だにしなかったレースが展開されている!息をのんで実況に耳を傾ける。

その差10秒!その差5秒!実況も熱を増す!

そして観客が見つめる青いパイロンの先にあるカーブ、与那嶺選手をかわし、ものすごい勢いで駆けてきたのは荻原麻由子選手!観客のボルテージが最高潮に達し「まゆこー!」とどこからともなく声援がわき上がる。

残り200m、萩原がついに與那嶺を捉えた。全く勢いが違う!残り200m、萩原がついに與那嶺を捉えた。全く勢いが違う! (c)Bisoh
あっと言う間に與那嶺との差を広げる萩原麻由子(Wiggle HONDA)あっと言う間に與那嶺との差を広げる萩原麻由子(Wiggle HONDA) (c)Bisoh
与那嶺選手をかわす瞬間ダンシングでペダルを踏み込み、一気に差を広げ、ゴールを目指す!振り向かず、力を緩めず、最後の最後に手を広げてフィニッシュ!

なんて美しい勝利だろう!万来の拍手と声援が彼女を包み込んだ。

與那嶺をかわした後も、ゴールまで勢いを緩めずに駆け上がっていく萩原麻由子(Wiggle HONDA)與那嶺をかわした後も、ゴールまで勢いを緩めずに駆け上がっていく萩原麻由子(Wiggle HONDA) (c)Bisoh
萩原にかわされた後スローダウンし、観客の声援に応えながらゴールへ向かう與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)萩原にかわされた後スローダウンし、観客の声援に応えながらゴールへ向かう與那嶺恵理(サクソバンクFX証券) (c)Bisoh敗れた与那嶺選手は萩原選手にかわされた後スローダウンし、観客へ感謝の気持ちを伝えながらゴール。彼女なしでは、この熱いレース展開は成立しなかった。勇気あるアタックに拍手を贈りたい。もう数年、この2人のデッドヒートが見られるだろうか。

3位には早稲田大学の合田祐美子選手が入り表彰台に登った。2強の後塵は拝したけれど、これも立派な結果。7月の世界大学選手権女子ロードレースでは7位に入る健闘。今後上位2人を脅かす選手の1人になるだろうか。これもまた楽しみだ。

そして最後に、表彰式の写真はこれを。他にもいい写真あるだろ、と言われそうだけども、おどけた表情の萩原選手がなんだか良くて、これにしてしまった。

全日本タイトルを奪還した萩原麻由子(Wiggle HONDA)、2位與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)、3位合田祐美子(早稲田大)全日本タイトルを奪還した萩原麻由子(Wiggle HONDA)、2位與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)、3位合田祐美子(早稲田大) (c)Bisoh
勝者・萩原選手の平均時速は32.68km/h。女子レーサー達の競演の後は、全日本選手権ロードレースの真のクライマックス、男子エリート。こちらも涙なしでは語れない、熱い結末が待っていた。
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