全日本選手権ロードレース2014の観戦記もこれで最後。国内外で活躍する日本人トップ選手達が集う男子エリート、その戦いの火ぶたは6月29日(日)8:00に切られた。
「今年もかー」と思わず呪いの言葉を吐きたくなる雨模様の中、スタートを切る選手達。男子エリートのコースは16周回252.8km。ただし荒天が懸念されたため、14周221.2kmへと事前に短縮が告知された。
今年は昨年のチャンピオン・新城幸也選手(チームユーロップカー)が翌週のツール・ド・フランスに向けた調整を優先、全日本への出場を取りやめた。同じくUCIプロチームで活躍し、今回出場の別府史之選手(トレックファクトリーレーシング)との争いも期待されただけに残念。しかしジロ・デ・イタリアで3度に及ぶ落車のダメージを負った後でもあり、再び訪れる長丁場のグランツールを乗り切るには仕方のない判断だ。
一方の別府選手は6月27日の全日本TT男子エリートで優勝、ロードでも本命の1人。対抗は清水都貴選手(ブリヂストンアンカー)、増田成幸選手(宇都宮ブリッツェン)、土井雪広選手(チーム右京)、そして全日本TTで別府選手に次いで2位に入った佐野淳哉選手(那須ブラーゼン)。あともう1人、宮澤崇史選手(ヴィーニファンティーニNIPPO)は個人的に大好きな選手で長らく応援しているのだが、今回は残念ながら不調のため序盤で自転車を降りてしまった。これまたとても残念…。完全復活を待ちたい。
レースは序盤から大人数の逃げ集団が編成された。計11人で佐野淳哉選手やブリヂストンアンカーの井上和郎選手らが入る、なかなか強力な逃げ。ただ、各有力チームがこの逃げに選手を送り込んだため、それを追うメイン集団の計算がわずかづつ狂っていく。
雨の次にやってきたのは女子エリートの記事でも触れた濃霧。フィニッシュラインを過ぎたところのコーナーで選手達を待ち構えるも、「FINISH」のバナーの文字が見えるか見えないという視界の悪さ。写真では補正して多少わかりやすくしているけど、実際はAFも迷うくらいになっていた。来年こそは爽やかな晴れ空の下、エリートのレースを見たい!と、この時は本気で思った。
メイン集団と先頭との差は一時5分以上開いたものの、その後2分30秒まで詰まっていく。しかしここからがメイン集団の誤算で、どうにもこれ以上タイム差が縮まっていかない。別府選手が何度も単騎で追う姿勢を見せたのに呼応して、ブリヂストンアンカーがペースを作っていくが、他のチームの協力が得られず決定的な追いにならず、という場面が繰り返される。
これが前に選手を送り込みすぎた故の駆け引きの穴。どのチームも前に自軍の選手がいれば積極的に引く理由はなく、レースは硬直状態に陥る。これをもって今回のレースを「つまらない」と評する人もいるのだけど、ずっと見ていれば、これはこれでよくあること。ロードレースの面白さの1つなんである。
そして、こうなろうとなるまいと、逃げた選手は自分の勝ちが欲しい。チームオーダーで戻されない限り、当然ひたすら逃げるのみ。淡々とローテーションし、一団となって進んでいく。
そんなわけでレース中盤は、見てる方にはひたすら淡々とした展開。佐野淳哉選手を長年応援する知人と雑談などをしながら「今年こそ佐野さんですよ!佐野さんに一票入れてくださいよ!」と言われ、じゃあ「佐野選手に一票!」と勢いで佐野淳哉選手支持。なお何も賭けてはおりませんので(スポーツ賭博は違法です)。
残り3周回に入ると、先頭11名に対して、メイン集団が2分前後まで差を縮めた。ジワジワとペースの上がる中、メイン集団の人数もだいぶ減ってきて、コース脇の丘から遠くまで見渡すと後方で1人また1人と遅れていく選手が見える。
メイン集団は、清水都貴・初山翔・寺崎武郎(ブリヂストンアンカー)、土井雪広・平井栄一(チーム右京)、別府史之(トレックファクトリーレーシング)、西谷泰治・早川朋宏・中島康晴(愛三工業レーシング)、鈴木譲・増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、畑中勇介・吉田隼人・入部正太郎(シマノレーシング)などなど一気に書いたので敬称略ですみません。
それと、MTBライダーの山本幸平選手(スペシャライズド)も別府選手と同じく単騎参戦だが、ここまで残っていた。ジャンルが違えどもパフォーマンスの高い選手は強い。確か今年はタイでロードの合宿もしていたように思う。この頃には雨がほぼ止んで小康状態に。
レースが残り2周回に突入したところでレースは再び動き出す。ブリヂストンアンカーがペースを上げ、逃げ集団を追い上げる。人数を徐々に減らしながらも1分20〜30秒程度の差まで先頭に迫る。
そんな中、逃げ集団にも動きが。井上選手、佐野選手、山本選手の3名と野中竜馬選手(シマノレーシング)が飛び出し、その後前者3名が再び先行、最終周回へと突入していく。彼らとメイン集団の差は変わらず。これはこの3人にチャンスありだ!
実況を聞いていた限り、下りは3人で行き、上りで勝負がかかったようだ。が、あまり情報が入ってこない。メディア各所の記事など見ると、井上、山本両選手のアタックの応酬があり、途中で脚の攣った佐野選手が彼らに食らいつくというような展開だったらしい。
だがしかし!勝負はわからないもので、最後残り1kmで、ついに自分のペースで踏み込み始めた佐野淳哉選手が前に出る。タイムトライアルに強い彼ならではの走り。長く強く走ることの出来る脚が、2人を封じ込め、差をつけ始める!やべええええ一票入れたぞー(笑)!
実況が佐野選手の独走を伝える!緊張しながら待つ。残り200〜300mにあるコーナーを佐野選手が上ってくる!1人だ!那須ブラーゼンファンの振る「佐野淳哉」の旗が歓喜の声を纏ってはためく!
そしてそのそばにはあの彼!大学時代から10数年来、佐野淳哉選手を応援し続けている彼!背中が泣いている!この光景、見ているこっちも泣きそう!あとは写真でどうぞ!
これが佐野淳哉選手にとって初のビッグタイトル。平均時速は38.82km/h。昨年の全日本ロードでは心身ともに不調にあえぎ、一番最初にリタイヤした選手だった。それが一転、今年は一番最初にゴールした選手となり、ナショナルチャンピオンジャージを1年間着用する権利と名誉を得た。苦しみを乗り越え、優しき男が手にしたタイトル。本当に素晴らしい勝利だった。
それともう1つ、結成2年目の那須ブラーゼンにとっても、これが記念すべきチーム初勝利!初めての優勝がまさかこんな大きなタイトルとは、関係者の皆さんもさすがに予想していなかったんじゃないだろうか。来年那須で全日本が開催されることもあり、何か導かれたものがあったのかもしれない。もちろんそれは佐野選手の実力に他ならないのだけれども。
2位と3位には最後まで勝負を争った井上和郎選手と山本元喜選手がそれぞれ入った。山本選手がプロ1年目にして3位という成績を残し、満足そうに表彰台に上がったのに対し、井上選手は2度目の2位。表彰式でも悔しそうな表情をしていた。
メイン集団から最後単独で追い上げた、井上選手のチームメイト・清水都貴選手は4位。彼も昨年の2位に続き、惜しい、そして悔しいレースだったと思う。彼らも自分が応援する選手達の1人であることに違いはない。また来年のチャレンジに期待したい。
フィニッシュの後、自分はすぐゴール方向には向かわず、まずは佐野淳哉ファンの彼の元へと祝福へ行った。彼は単なるファンではなく、佐野選手とともに長く戦ってきた人でもある。しがないロードレースファンの1人として、日本一の佐野淳哉ファンを讃えないわけにはいかなかった。号泣する彼に「おめでとう!素晴らしい勝利だったね!」と伝え、握手を交わした。
今年の全日本選手権ロードレースもこれにて終了。そういえばレース中降っていた雨は、すっかり止んでいた。表彰式とプレスの囲み取材の後は、佐野選手や那須ブラーゼンの清水良之フレーイングマネージャーにもお祝いを言ったり、知り合いの方々と話したり。みんな帰り支度で忙しいところなので短い時間ではあったけど、アフターレースも楽しく過ごした。
最後に改めて佐野選手の勝利を心の底から祝福したい。本当におめでとう!
「今年もかー」と思わず呪いの言葉を吐きたくなる雨模様の中、スタートを切る選手達。男子エリートのコースは16周回252.8km。ただし荒天が懸念されたため、14周221.2kmへと事前に短縮が告知された。
今年は昨年のチャンピオン・新城幸也選手(チームユーロップカー)が翌週のツール・ド・フランスに向けた調整を優先、全日本への出場を取りやめた。同じくUCIプロチームで活躍し、今回出場の別府史之選手(トレックファクトリーレーシング)との争いも期待されただけに残念。しかしジロ・デ・イタリアで3度に及ぶ落車のダメージを負った後でもあり、再び訪れる長丁場のグランツールを乗り切るには仕方のない判断だ。
一方の別府選手は6月27日の全日本TT男子エリートで優勝、ロードでも本命の1人。対抗は清水都貴選手(ブリヂストンアンカー)、増田成幸選手(宇都宮ブリッツェン)、土井雪広選手(チーム右京)、そして全日本TTで別府選手に次いで2位に入った佐野淳哉選手(那須ブラーゼン)。あともう1人、宮澤崇史選手(ヴィーニファンティーニNIPPO)は個人的に大好きな選手で長らく応援しているのだが、今回は残念ながら不調のため序盤で自転車を降りてしまった。これまたとても残念…。完全復活を待ちたい。
レースは序盤から大人数の逃げ集団が編成された。計11人で佐野淳哉選手やブリヂストンアンカーの井上和郎選手らが入る、なかなか強力な逃げ。ただ、各有力チームがこの逃げに選手を送り込んだため、それを追うメイン集団の計算がわずかづつ狂っていく。
雨の次にやってきたのは女子エリートの記事でも触れた濃霧。フィニッシュラインを過ぎたところのコーナーで選手達を待ち構えるも、「FINISH」のバナーの文字が見えるか見えないという視界の悪さ。写真では補正して多少わかりやすくしているけど、実際はAFも迷うくらいになっていた。来年こそは爽やかな晴れ空の下、エリートのレースを見たい!と、この時は本気で思った。
メイン集団と先頭との差は一時5分以上開いたものの、その後2分30秒まで詰まっていく。しかしここからがメイン集団の誤算で、どうにもこれ以上タイム差が縮まっていかない。別府選手が何度も単騎で追う姿勢を見せたのに呼応して、ブリヂストンアンカーがペースを作っていくが、他のチームの協力が得られず決定的な追いにならず、という場面が繰り返される。
これが前に選手を送り込みすぎた故の駆け引きの穴。どのチームも前に自軍の選手がいれば積極的に引く理由はなく、レースは硬直状態に陥る。これをもって今回のレースを「つまらない」と評する人もいるのだけど、ずっと見ていれば、これはこれでよくあること。ロードレースの面白さの1つなんである。
そして、こうなろうとなるまいと、逃げた選手は自分の勝ちが欲しい。チームオーダーで戻されない限り、当然ひたすら逃げるのみ。淡々とローテーションし、一団となって進んでいく。
そんなわけでレース中盤は、見てる方にはひたすら淡々とした展開。佐野淳哉選手を長年応援する知人と雑談などをしながら「今年こそ佐野さんですよ!佐野さんに一票入れてくださいよ!」と言われ、じゃあ「佐野選手に一票!」と勢いで佐野淳哉選手支持。なお何も賭けてはおりませんので(スポーツ賭博は違法です)。
残り3周回に入ると、先頭11名に対して、メイン集団が2分前後まで差を縮めた。ジワジワとペースの上がる中、メイン集団の人数もだいぶ減ってきて、コース脇の丘から遠くまで見渡すと後方で1人また1人と遅れていく選手が見える。
メイン集団は、清水都貴・初山翔・寺崎武郎(ブリヂストンアンカー)、土井雪広・平井栄一(チーム右京)、別府史之(トレックファクトリーレーシング)、西谷泰治・早川朋宏・中島康晴(愛三工業レーシング)、鈴木譲・増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、畑中勇介・吉田隼人・入部正太郎(シマノレーシング)などなど一気に書いたので敬称略ですみません。
それと、MTBライダーの山本幸平選手(スペシャライズド)も別府選手と同じく単騎参戦だが、ここまで残っていた。ジャンルが違えどもパフォーマンスの高い選手は強い。確か今年はタイでロードの合宿もしていたように思う。この頃には雨がほぼ止んで小康状態に。
レースが残り2周回に突入したところでレースは再び動き出す。ブリヂストンアンカーがペースを上げ、逃げ集団を追い上げる。人数を徐々に減らしながらも1分20〜30秒程度の差まで先頭に迫る。
そんな中、逃げ集団にも動きが。井上選手、佐野選手、山本選手の3名と野中竜馬選手(シマノレーシング)が飛び出し、その後前者3名が再び先行、最終周回へと突入していく。彼らとメイン集団の差は変わらず。これはこの3人にチャンスありだ!
実況を聞いていた限り、下りは3人で行き、上りで勝負がかかったようだ。が、あまり情報が入ってこない。メディア各所の記事など見ると、井上、山本両選手のアタックの応酬があり、途中で脚の攣った佐野選手が彼らに食らいつくというような展開だったらしい。
だがしかし!勝負はわからないもので、最後残り1kmで、ついに自分のペースで踏み込み始めた佐野淳哉選手が前に出る。タイムトライアルに強い彼ならではの走り。長く強く走ることの出来る脚が、2人を封じ込め、差をつけ始める!やべええええ一票入れたぞー(笑)!
実況が佐野選手の独走を伝える!緊張しながら待つ。残り200〜300mにあるコーナーを佐野選手が上ってくる!1人だ!那須ブラーゼンファンの振る「佐野淳哉」の旗が歓喜の声を纏ってはためく!
そしてそのそばにはあの彼!大学時代から10数年来、佐野淳哉選手を応援し続けている彼!背中が泣いている!この光景、見ているこっちも泣きそう!あとは写真でどうぞ!
これが佐野淳哉選手にとって初のビッグタイトル。平均時速は38.82km/h。昨年の全日本ロードでは心身ともに不調にあえぎ、一番最初にリタイヤした選手だった。それが一転、今年は一番最初にゴールした選手となり、ナショナルチャンピオンジャージを1年間着用する権利と名誉を得た。苦しみを乗り越え、優しき男が手にしたタイトル。本当に素晴らしい勝利だった。
それともう1つ、結成2年目の那須ブラーゼンにとっても、これが記念すべきチーム初勝利!初めての優勝がまさかこんな大きなタイトルとは、関係者の皆さんもさすがに予想していなかったんじゃないだろうか。来年那須で全日本が開催されることもあり、何か導かれたものがあったのかもしれない。もちろんそれは佐野選手の実力に他ならないのだけれども。
2位と3位には最後まで勝負を争った井上和郎選手と山本元喜選手がそれぞれ入った。山本選手がプロ1年目にして3位という成績を残し、満足そうに表彰台に上がったのに対し、井上選手は2度目の2位。表彰式でも悔しそうな表情をしていた。
メイン集団から最後単独で追い上げた、井上選手のチームメイト・清水都貴選手は4位。彼も昨年の2位に続き、惜しい、そして悔しいレースだったと思う。彼らも自分が応援する選手達の1人であることに違いはない。また来年のチャレンジに期待したい。
フィニッシュの後、自分はすぐゴール方向には向かわず、まずは佐野淳哉ファンの彼の元へと祝福へ行った。彼は単なるファンではなく、佐野選手とともに長く戦ってきた人でもある。しがないロードレースファンの1人として、日本一の佐野淳哉ファンを讃えないわけにはいかなかった。号泣する彼に「おめでとう!素晴らしい勝利だったね!」と伝え、握手を交わした。
今年の全日本選手権ロードレースもこれにて終了。そういえばレース中降っていた雨は、すっかり止んでいた。表彰式とプレスの囲み取材の後は、佐野選手や那須ブラーゼンの清水良之フレーイングマネージャーにもお祝いを言ったり、知り合いの方々と話したり。みんな帰り支度で忙しいところなので短い時間ではあったけど、アフターレースも楽しく過ごした。
最後に改めて佐野選手の勝利を心の底から祝福したい。本当におめでとう!
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